アミオダロン塩酸塩錠は、「生命に危険のある再発性不整脈(心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動)で他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合」を適応として、1992年に国内で上市された。2010年には「心不全(低心機能)に伴う心房細動」に対しても適応を取得した。
近年、発症早期の心房細動において、早期リズムコントロールの実施が有効であると報告されており1)、心不全(低心機能)を伴う心房細動でも早期の段階からレートコントロールとともにリズムコントロールの実施を考慮していくことが重要と考えられる。リズムコントロールのうち、心機能低下例に使用できる経口薬剤として第一選択となるアミオダロンの役割は、今後も重要になってくると考えられる2)。
一方でアミオダロンは、心外性副作用の頻度が高く、かつ致死的副作用を有する事が問題となっている。特にアミオダロンの肺障害の発現頻度に関しては、人種間の差3)や、アンジオテンシンⅡの関与が示唆されている4)が、維持量、N-モノデスエチルアミオダロン濃度、年齢が増すにつれて発現頻度は上昇することが報告されている3)。アミオダロンによる不整脈治療のポイントは有効性を維持しうる最小維持量を用い、副作用の発現を極力抑えることにある。
2010年5月に発売されたアミオダロン塩酸塩速崩錠「TE」は、国内唯一の50mg錠を有する、不整脈治療剤で国内初の「速崩壊型」錠剤である。また、2018年6月に発売されたアミオダロン塩酸塩静注150mg「TE」は、室温保存が可能で、有効期間が3年である。
このたび、当院におけるアミオダロンの導入、維持、各種検査スケジュールを提示して、安全使用実践マニュアルを作成した。このマニュアルがアミオダロン製剤の安全かつ有効な使用に少しでも役立つように願うところである。
1)Kirchhof P.et al. N Engl J Med. 2020 Oct 1; 383(14): 1305-1316.
2)日本循環器学会/日本心不全学会.急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/06/JCS2017_tsutsui_h.pdf (2023年5月閲覧)
3)Yamada Y, et al. Circ J, 2007; 71: 1610-6.
4)Nikaido A, et al. Int J Cardiol, 2010; 140: 328-35.
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門 部門長 草野 研吾 先生
アミオダロン塩酸塩静注150mg「TE」、アミオダロン塩酸塩速崩錠50mg「TE」・100mg「TE」の効能又は効果、用法及び用量、警告・禁忌を含む使用上の注意等詳細は電子添文等のDIをご参照ください。
本コンテンツに掲載されている記事には、本邦における未承認薬および適応外、用法・用量外の情報が含まれる場合があります。本コンテンツは、特定の薬剤の処方誘引あるいは企業の営利を企図するものではありません。薬剤の使用については各医薬品の最新電子添文等のDIをご参照ください。なお、本コンテンツの利用によって生じるいかなる損害について、当社は一切責任を負うことができませんので、あらかじめご了承ください。当サイトのご利用条件もご確認をお願い致します。