循環器用語ハンドブック

硝酸薬〈nitrate〉

硝酸エステル化合物であるニトログリセリン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビドを指し、狭心症および心不全治療薬として用いられる。舌下錠、経口剤、経皮吸収剤、注射剤、口腔用スプレー剤などさまざまな剤形が開発されている。

硝酸薬の作用は、主に血管平滑筋弛緩作用による血管拡張であると考えられる。生体内における内皮由来血管弛緩因子(endothelium derived relaxing factor;EDRF)の本体は一酸化窒素(NO)であるが、硝酸薬は血管内皮細胞内においてグルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutatione S-transferase;GST)やチオール基あるいはヘム蛋白の1つであるチトクロームP-450を介してNOを発生することにより、血管拡張作用を発現する。

狭心症は心筋酸素需要と冠動脈からの酸素供給バランスの崩壊より生じる症候群であるが、器質的狭窄による労作性狭心症の場合には硝酸薬は主に太い冠血管を拡張し、冠血流を増加させることにより心筋虚血を改善させる。冠攣縮による狭心症の場合には、攣縮解除による緩解および攣縮予防に用いられる。硝酸薬は主に全身の静脈系を拡張することにより前負荷を減少させ、肺うっ血を軽減させることから前負荷軽減薬として心不全治療に用いられる。Forrester分類Ⅱ型またはⅣ型の急性心不全および慢性心不全急性増悪時の薬物治療には、利尿薬のほか血管拡張薬として静注型の硝酸薬が広く用いられている。

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