循環器用語ハンドブック
硝酸薬耐性〈nitrate tolerance〉
耐性とは、同じ生理作用を得るために薬物量を増加させなければならない状態のことで、硝酸薬の使用には耐性が生じることが報告されている。狭心症に対して用いた場合は、組成(ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド)あるいは剤形(静注、経口、経皮吸収)にかかわらず耐性を生じ、その結果運動耐容能の改善効果が減弱することが知られている。静注薬も含め、心不全に対し処方する場合にも肺動脈楔入圧や左室内圧などの血行動態の改善作用に耐性を生じる。
硝酸薬の耐性に関係する因子としては頻回な使用、大量投与、徐放剤の使用、持続投与、休薬期間なしの投与などがあり、これらの重複により耐性が起こりやすい。耐性が生じるメカニズムについては、①血管内皮細胞内においてNO(一酸化窒素)生成に必要なチオール基の枯渇、②NO生成に関与するグルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutatione S-trans ferase;GST)やチトクロームP-450活性の低下、③内皮細胞由来の活性酸素産生によるNO生成の減弱とプロテインキナーゼC活性化の亢進、④NOから平滑筋弛緩に至る経路においてシグナル伝達に関わる、グアニル酸シクラーゼの感受性低下やPDE(ホスホジエステラーゼ)活性の亢進、などの機序が関与する。
硝酸薬の耐性に対しては、投与間隔を不均一にする、あるいは休薬期間を置くことが有効な場合がある。経皮吸収型の薬剤であれば日中に貼布し夜間就寝時には剥がす、経口投与の硝酸イソソルビドや一硝酸イソソルビドも投与間隔を不均一にして血中濃度を変動させる、などの工夫が有効である。

