洞不全症候群症例では洞結節回復時間(sinus node recovery time;SNRT)が異常に延長することが知られており、高位右房のoverdrive pacingによるSNRTの延長は不顕性例も含めた洞不全症候群の診断に有用である。
SNRTの測定に際しては、洞調律より15~20/min早いpacing rateで高位右房を30秒刺激し、最終刺激によるP波から最初の洞性P波出現までの時間を計測する。SNRTは基本洞調律長(sinus cycle length;SCL)により影響されるのでpacing rateを変化させて複数回行うことが必要であり、さらに以下の式によりcorrected SNRT(CSNRT)にて表現されることが多い。
CSNRT=SNRT-SCL
SNRT、CSNRTは方法の差異によりその正常値が各報告で異なる(SNRT<1,400~1,600ms、CSNRT<508~680ms)。また洞不全症候群ではpacing終了後第1拍は比較的早期に再開するものの、第2拍が著明に遅延したり(secondary pause)、洞自動能抑制効果が遷延するためにpacing後正常洞調律長への復帰が遷延する(warm up)といった現象が認められることがある。したがって、洞結節自動能の評価はSNRT、CSNRTのみならず、これらの現象も考慮した完全自動能回復時間を含め、総合的になされるべきであると考えられる。