細胞外マトリックス成分であるコラーゲンなどの蛋白質やプロテオグリカンの分解酵素は、形態形成や血管新生に重要な働きをしている。これらマトリックス成分の分解系は、食作用により細胞内に取り込まれてから分解される系のほかに細胞外で分解される系があり、matrix metalloproteinase(MMP)という酵素群が関与している。MMPは活性中心に亜鉛をもつ金属酵素であり、MMP-1~MMP-20のアイソフォームがある(表)。未変性の線維性コラーゲンはMMP-1、-8、-13により1:3に切断され、さらにゼラチン分解性のMMP-2、-3、-9により低分子化されたのち代謝される。MMP-14~-17は膜結合型であり、proMMPの活性化を調節している可能性が指摘されている。
MMP-1、-3の産生はIL-1などのサイトカインにより増加し、慢性リウマチにおける関節軟骨破壊の原因になっている。血管系においてはMMPは活性化した平滑筋細胞やマクロファージなどから産生され、動脈硬化プラークの線維性皮膜中の細胞外マトリックスを分解することでプラークを脆弱化させる。
一方、tissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)というMMPファミリー共通の内因性インヒビターにより、MMP活性は抑制されている。TIMPにはTIMP-1~-4のアイソフォームがあり、活性型MMPと1:1の複合体を形成してその活性を阻害する。マクロファージはTIMPを産生することによりMMP活性を制御しているが、泡沫化することによりTIMPの産生は低下する。
TIMPはMMPの阻害のほか増殖因子としての側面ももっており、血管内皮細胞増殖抑制作用、erythroid potentiating activity(EPA)、embryogenesis-stimulating activity(ESA)などを示す。