アデノシン〈adenosine〉/アデノシン受容体〈adenosine receptor〉

アデノシンは、アデニンを塩基部分に含むリボヌクレオシドである。分子量は267.24、RNAおよび補酵素(NAD、FAD、CoA)に含まれ、それらを加水分解することにより得られる。生体内ではアデノシン一リン酸(AMP)から5'-ヌクレオチダーゼの作用により生成され、アデノシンキナーゼによりリン酸化されAMPに変換される。またアデノシンデアミナーゼにより脱アミノ化されてイノシンとなる(図)。

アデノシンの代謝経路

アデノシンは、心臓、骨格筋、脳、肝臓などの種々の臓器の血管拡張を司っており、特に冠血管については、主として直径50~200μmの抵抗血管を拡張し、冠血流量増加をもたらすことから、重要な冠血流量調節因子と考えられている。また、内皮細胞から産生されるアデノシンは、冠血流量制御のみならず、血小板凝集・白血球活性化の抑制に作用する。

アデノシン受容体は、ストレス刺激などで細胞から放出されたアデノシンが特異的に結合して刺激する細胞膜受容体で、心筋、平滑筋、脳、血小板、腎臓、白血球などに広く存在している。その生理作用は組織により異なっており、アデノシン類似体に対する選択性の違いから、A1~A3に分けられる。A1受容体は、抑制性グアノシン三リン酸(GTP)結合蛋白と結合し、アデニル酸シクラーゼを抑制してサイクリックAMP(cAMP)産生を抑制するのに対し、A2受容体は、刺激性GTP結合蛋白と結合し、アデニル酸シクラーゼを刺激して細胞内cAMP濃度を上昇させる。A3受容体はGTP結合蛋白と結合するが、アデニル酸シクラーゼとは関係なく、ホスホリパーゼC活性化を介した細胞内情報伝達が重要であると考えられている。

心筋では虚血刺激に応じて大量のアデノシンが遊出することが知られているが、このアデノシンが強い心筋保護作用を有し、可逆的・不可逆的な心筋障害に対してその障害を軽減する。実際、イヌの虚血再灌流モデルにおいて、アデノシン投与が心筋スタニングの抑制や心筋梗塞サイズの縮小効果をもつことが実験的に示されている。また慢性心不全において、その重症度に比例して内因性のアデノシンレベルが上昇していることと、アデノシン産生酵素である5'-ヌクレオチダーゼの増加が報告されている。