キマーゼ〈chymase〉

分子量約30kDa、中性のセリンプロテアーゼ。ヒトキマーゼは、アンジオテンシンⅠ(AⅠ)を基質としてアンジオテンシンⅡ(AⅡ)を産生する。キマーゼは当初、トリプターゼと並んで中性プロテアーゼとして肥満細胞内に存在することが知られていたが、後にラットのキマーゼがAⅠの分解酵素であることが判明し、続いてヒトキマーゼが、AⅠからAⅡを産生することが明らかとなった。

ヒトキマーゼについて心室でのアンジオテンシン産生の酵素活性をみると、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬で抑制される割合が小さく、大半がセリンプロテアーゼ阻害薬で抑制されることが見出された。すなわち、全身の循環コントロールのための血管内のレニン-アンジオテンシン系と異なり、組織中のアンジオテンシン産生系としては、心室においてはむしろACEの関与する割合が小さいことが示唆された。

キマーゼのアンジオテンシン産生能は少なくともin vitroではACEを凌ぎ、既知の中では最も強力なAⅡ産生酵素である。またAⅠに特異的に作用し、ACEのよい基質であるブラジキニンやサブスタンスP、黄体ホルモン放出ホルモン、エンケファリンなどを分解せず、きわめて特異性が高い。

不全心において組織アンジオテンシン系の抑制が予後の改善をもたらすと考えられているが、ACE阻害薬がACEによるアンジオテンシン産生のみしか抑制しないのに対して、AT1受容体拮抗薬はキマーゼにより産生されたアンジオテンシンの効果をも抑制しうるので、より心保護効果が高いのではないかと考えられるが、併用による予後改善効果を検討した大規模臨床試験Val-HeFT(Valsartan Heart Failure Trial)の結果、心不全の標準的治療にアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を追加することの有用性が認められた。

製品情報一覧

  • ア行
  • カ行
  • サ行
  • タ行
  • ナ行
  • ハ行
  • マ行
  • ヤ行
  • ラ行
  • ワ行
  • やさしい心電図の見方
  • 心臓・血管病アトラス
  • 経皮吸収型製剤使用マニュアル
  • ビソノテープQ&A