ACE2

アンジオテンシン変換酵素(ACE)2は、2000年に初めてACE相同遺伝子として発見された。ACEとACE2の間にはかなりの構造的相同性があるものの、その酵素活性部位は異なっている。ACE2は肺、動脈、心臓、腎臓、腸などのさまざまな組織の細胞表面に発現する酵素であり、アンジオテンシンⅡをアンジオテンシン(1-7)に分解し、レニン-アンジオテンシン系を負に調整、血管収縮、ナトリウム貯留、線維化に対する作用を減弱させ、臓器保護的に働く。ACE2はアンジオテンシンⅡを一次基質とするが、アンジオテンシンⅠもアンジオテンシン(1-9)に分解する。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白とACE2は強い結合親和性をもち、SARS-CoV-2はACE2を受容体として細胞内に侵入し感染が成立、種々の臓器障害を惹起する。そして、感染した細胞表面からはACE2の発現が減少する。肺においては、SARS-CoV-2はACE2が発現するⅡ型肺胞上皮細胞などに感染し、肺炎を引き起こす。加えて、ACE2が発現する心筋への感染も知られ、心筋に直接的に炎症や障害を起こすだけでなく、ACE2の作用が低下する結果、アンジオテンシンⅡによる酸化ストレス増加や細胞障害が顕著となる。また、SARS-CoV-2がACE2を介して血管内皮細胞に感染し、ACE2の機能が損なわれると、血管内皮細胞内の酸化ストレスが高まり、血管内皮障害が進行、血栓を形成、心筋虚血や肺血栓塞栓症につながることも知られている。