トロンボモジュリン〈thrombomodulin;TM〉

トロンボモジュリンは、正常な血管内皮細胞の表面に発現している糖蛋白で、アンチトロンビン、組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor;TFPI)、ヘパリンコファクターⅡなどと並んで凝固制御機構の一端を担う。その機構であるが、血中のトロンビンと複合体を形成して、トロンビンに2つの変化を起こさせる。複合体を形成したトロンビンは、まず第1に凝固促進活性(フィブリノゲンのフィブリンへの変換、第Ⅴ・第Ⅷ因子の活性化、血小板の活性化)を失う。また第2に血中のビタミンK依存性抗凝固蛋白質であるプロテインC(PC)に対する活性化能を獲得し、活性化プロテインC(APC)に変換させる。活性化されたプロテインCは、プロテインSおよび第Ⅴ因子を補酵素として、ⅤaおよびⅧa因子を分解し、凝固が進展しないよう抑制する。活性化プロテインCは、血中のプロテインCインヒビターまたはα1アンチトリプシンと複合体を形成して失活する。さらに、トロンボモジュリンと結合したトロンビンは、最近血中に発見された分子量約4.8万のTAFI(thrombin activable fibrinolysis inhibitor)を活性化し、カルボキシペプチダーゼBに変換させ、これはプラスミノゲンがプラスミンに変換されて出現するリジン結合部位を介した線溶促進反応を抑制する。これらは凝固と線溶のバランス反応の1つである(図)。内皮細胞が傷害されると、トロンボモジュリンは細胞内にあったプロテアーゼで分解されて血中へ遊離され、可溶性となって尿中へも排泄される。

トロンビン・トロンボモジュリン複合体による凝固と線溶の制御