収縮帯壊死〈contraction band necrosis〉/凝固壊死〈coagulation necrosis〉

虚血に伴う心筋壊死の病理学的所見には、大別すると凝固壊死と収縮帯壊死の2つがある。凝固壊死は高度の虚血が持続したときに認められる壊死形態であり、梗塞発症後約4~6時間を経て顕微鏡で観察される。心筋は好酸性を帯び、時間の経過とともに横紋の不明瞭化・消失がみられ、心筋細胞は波状を呈する。次いで心筋の核の膨化、濃染ないし消失がみられ、細胞膜は融解する。やがて好中球が出現してくる。凝固壊死の機序としては、酸性水解酵素の活性化や、カルシウムイオン(Ca2+)の異常流入に伴うCa2+依存性反応が考えられている。

一方、収縮帯壊死は再灌流障害時に認められる。再灌流障害とは、いったん虚血に陥った心筋に再灌流すると心筋細胞の救済は得られず、かえって血流再開により心筋障害が増悪するという現象である。収縮帯壊死では、過収縮した横紋の集積像が特徴的である。この機序としては、主にCa2+の細胞内過剰負荷(Ca2+ overload)や活性酸素の関与が考えられている。また、収縮帯壊死は再灌流後のみならず、遷延する低血圧、カテコラミンの大量投与、除細動などの諸状態で起こることが知られている。