シェアストレス〈shear stress〉

血管壁には、常に血行力学的応力として、血圧による血管壁に垂直に作用する力(stretch)と、血流による血管内腔表面の接線方向に作用する力壁ずり応力(wall shear stress)が作用している。シェアストレスは、(図)に示すように血液の粘性と血流の速度勾配に比例する物理力で、血管内皮のみに作用し、内皮細胞を血流の方向に歪ませる。これが刺激となり内皮細胞の機能が変化する。生体の動脈では20dynes/c㎡前後、静脈では1.5~6dynes/c㎡のシェアストレスが内皮にかかる。また、冠動脈に狭窄が生じるとその部分の血流速度が上昇し、シェアストレスが500dynes/c㎡に達することもある。粥状動脈硬化病変に好発する動脈の湾曲部や分岐部ではシェアストレスが相対的に低く、血流が乱流となるためその方向や強さが非定常となっている。

シェアストレス

近年、シェアストレスが血管内皮の形態や機能を変えることが明らかになってきた。たとえば、シェアストレスは細胞骨格の分布や量を変えて内皮細胞の形態や配列や運動に影響を及ぼす。また血管のトーヌスに対する作用のほかに内皮の蛋白の透過性や、トロンボモジュリンやプラスミノゲンアクチベータを介した抗血栓活性、さらには細胞増殖因子やサイトカインや接着分子の産生・発現、ひいては内皮と他の細胞との相互作用にも影響を及ぼす。