Frank-Starling機序〈Frank-Starling mechanism〉

Frank-Starling機序は、20世紀初頭にStarlingらが肺循環系を残したままの心肺標本を用いて右房圧と心拍出量の関係を調べた結果に基づいている。この結果では、後負荷や収縮力を一定に保ったうえで右房圧のみを増加させると、1回拍出量は増加する(図A、点a→a')。また、この曲線は基礎収縮力の低下や後負荷の増加で下方に移動し(点a→b)、逆の条件で上方に移動する(点a→c)。また一般的に、左室拡張末期容積や左室拡張末期圧など、右房圧以外の前負荷の指標が増加すれば心拍出量が増加することもわかっている。このように、Frank-Starling機序は前負荷が心拍出量に与える影響をみたものである。静脈還流量と右房圧には負の相関があり、静脈還流量と右房圧の関係曲線を右房圧と心拍出量の関係曲線に重ねるとその交点が平衡点となり、静脈還流量と右房圧と心拍出量の3つの値が平衡した状態が決定される(図B、Guytonの心機能曲線)。循環血液量の増加などで静脈還流曲線が上方に変化すれば、平衡点は移動して心拍出量は増大することがわかる(図B、点a→点a')。Frank-Starlingの関係を、細胞生物学的な立場から、筋原線維の筋節の長さが最適の条件におかれた際に最大張力を発生するという筋原線維の長さ・張力関係に重ね合わせて考えることは興味深い。しかし、心筋では骨格筋と筋原線維の性質が異なり、細胞内Ca2+濃度が低くても不相応に多数の連結橋(crossbridge)が残ることや、慢性心不全では前負荷は増大するものの筋節の負荷による伸張がみられず正常値と大差ないことなど、臓器としての挙動を筋節の知識で説明できるかどうかまだ明らかでない点も多い。

フランク・スターリング機序