到達した電気的な興奮を受けて筋収縮を引き起こすことを興奮・収縮連関といい、筋鞘、筋小胞体、筋節が協調して働き、電気的な興奮を物理的な収縮弛緩運動へと変換している。心筋細胞が受けた興奮刺激は、まず横細管(T管)に存在する電位依存性のL型Ca2+チャネル(ジヒドロピリジン受容体)を活性化させる(図A)。活性化された電位依存性L型Ca2+チャネルは細胞内へ少量のCa2+を流入させ、それに反応して、心筋小胞体の終末槽にあるCa2+遊離チャネル(リアノジン受容体)が筋小胞体内のCa2+を大量に遊離して筋収縮のきっかけをつくる(図B、C)。これはCa2+誘導性Ca2+遊離機構(図C)と呼ばれており、電位依存性L型Ca2+チャネルと、Ca2+遊離チャネルのフット構造と呼ばれる大きな膜外ドメインが重要な役割を果たしていると考えられている。ちなみに骨格筋細胞では心筋細胞と異なり、電位依存性Ca2+チャネルからのシグナルはCa2+流入を介さずに蛋白質間の直接的な相互作用でCa2+遊離チャネルに伝えられると考えられている。
心筋細胞において、Ca2+遊離チャネルを介して心筋小胞体内のCa2+が細胞内へ遊離されると、細胞内Ca2+濃度が上昇し筋収縮が惹起される。つまり、細胞内Ca2+濃度が10-7Mより10-5Mに上昇すると、Ca2+とトロポニンCとの結合が高まり、トロポニンIのトロポミオシンを介したアクチン・ミオシン相互作用に対する抑制作用が解除されて、アクチン・ミオシンの間に形成される連結橋の数が増加し、その結果として心筋細胞の張力が増大し筋収縮が始まる。
(参考:心筋細胞内Ca2+シグナリング)