近年、経口剤、注射剤と並び、「全身用経皮吸収剤」が注目を浴びています。全身用経皮吸収剤は、経口投与が困難な患者様でも服薬が容易であり、注射剤のように投与時の痛みを伴いません。また、徐々に有効成分が皮膚より吸収されるため血中濃度の立ち上がりがゆるやかで、長時間安定した血中濃度が得られる等々、ユニークかつ有用な特性を持っています。
1984年に、わが国初の全身用経皮吸収剤である「フランドルテープ」(経皮吸収型・虚血性心疾患治療剤/硝酸イソソルビドテープ剤)を、日東電工株式会社と共同開発した当社は、テープ剤の特性(長時間にわたり安定した血中濃度が得られること、経口投与が不向きな患者さんのアドヒアランス向上等)は高血圧治療にも活かすことができると考えました。そこで、全身用経皮吸収剤のパイオニアとして培ってきたknow-howを基に日東電工株式会社と共同開発を着手し、2013年6月に「ビソノテープ4mg・8mg」の販売名で、「本態性高血圧症(軽症~中等症)」を効能・効果として製造販売承認を取得しました。
また、頻脈性心房細動患者に対する心拍数調節治療においても、ビソノテープは有用と考え、慢性心房細動患者に対する第Ⅲ相検証試験および長期投与試験を実施した結果、2019年1月に「頻脈性心房細動」の適応を取得しました。併せて、頻脈性心房細動治療におけるより細やかな用量調整を可能とするために、「ビソノテープ2mg」を新たな規格として追加しました(2019年6月► ビソノテープ2mg新発売のお知らせ)。
第3の投与経路と言われている皮膚は、外因性・内因性物質の吸収・排出を阻止するバリア機能として身体を保護するなど、生命を維持する上で不可欠な機能を担っています。ビソノテープの製品開発では、大きく3つの課題がありました。
経皮吸収する薬物の条件 |
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分子量が小さい(500以下) |
融点が低い |
適度な分配係数(logP=2~3程度) |
低用量、高活性 |
日本ゴム協会誌.2014:87(10):422-4272より抜粋改編 |
皮膚は体内と外界を隔てるバリアであり、異物である薬物を吸収させる構造となっていません。一般的に、薬物を経皮吸収させるには、右表のような条件が必要となります。
この中で、①角質層では脂溶性の高い薬物が通過(透過)しやすく、②角質層以下の部位では親水性の高い薬物が通過(透過)しやすいことから、性質の異なる2つの膜の通過(透過)に最適な分配係数が必要です。ビソノテープの開発においては、以下の検討により皮膚透過性の向上を図りました。
通常、経口投与される薬物は、溶解性の面から、塩(えん)を形成し使用されています。ビソノテープの開発では、ビソプロロールフマル酸塩を遊離化することにより、皮膚透過性を高めることに成功しました。ビソノテープの有効成分には、フリー体であるビソプロロールを採用しています。
in vitro 皮膚透過試験の結果を基に血中濃度推移の予測を行い、血中濃度の立ち上がりがゆるやかで、かつ24時間にわたって血中濃度の持続を可能とする処方を見出しました。
貼付剤の皮膚刺激の要因には、成分(主薬、添加剤)に起因するものと、粘着物性(粘着力)に起因するものに大別されます。
各種の降圧薬の中でβ遮断薬は比較的良好な皮膚透過性を示しますが、その一方で皮膚刺激性があることが報告されていました。そのようなβ遮断剤の中でも、ビソプロロールは皮膚刺激性の少ないことを確認しました。
最適な添加剤の選択と配合比率の調整を重ね、皮膚刺激が少なく、剥がれにくい粘着物性を有する処方を調整しました。
製剤の安定性は、主薬自身の安定性や主薬と添加剤の相互作用(配合変化)により変化します。ビソノテープでは、種々の粘着剤を検討し、ビソプロロールの安定性が良好な粘着剤を開発しました。
ビソノテープは、白色半透明の粘着テープ剤で、膏体面は透明のライナーで覆われています。
大きさは、2mg製剤が30.0mm×30.0mm(面積:8.9cm2)、4mg製剤が42.5mm×42.5mm(面積:17.9cm2)、8mg製剤が60.0mm×60.0mm(面積:35.7cm2)で、テープ本体には製品名及び規格、4mg・8mg製剤には“β”と心臓をイメージした薬効マークを表示し識別性を高めると共に、貼付日時等を記入できる様に「書き込みスペース」を設けました。患者様ご本人だけでなく、医療関係者やご家族の皆様も視覚的に確認することができるので、服薬状況の確認や貼り忘れの防止などにご活用いただけます。
本剤の「効能・効果」、「用法・用量」、「用法・用量に関連する使用上の注意」、「禁忌」を含む「使用上の注意」等は「添付文書」をご参照ください。添付文書等DIはこちら