適正使用情報
5.経皮吸収型製剤による皮膚への副作用について
経皮吸収型製剤の副作用としての皮膚症状は、接触性皮膚炎と呼ばれる疾患に該当します。皮膚症状の頻度や程度は、有効成分・素材が各製剤によって異なるためそれぞれ違いがありますが、一般的には紅斑、ヒリヒリ感、痛み、かゆみなどの症状が出現し、製剤を剥がした後、1~2日で軽減ないし消失することがほとんどです。
■ 経皮吸収型製剤による刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の臨床像の違い
| 刺激性接触皮膚炎 | アレルギー性接触皮膚炎 | |
|---|---|---|
| 発症頻度 | 比較的よくみられる |
きわめて少ない
(原因物質にアレルギーがある場合のみ発現する) |
| 症状の特徴 | 紅斑のほか、ヒリヒリ感、痛み、かゆみなどが生じる | 刺激性接触皮膚炎の症状と似ているが、特にかゆみが強い |
| 症状の形態 | 紅斑のみで、丘疹や水疱は伴わず、表面の盛り上がりはみられないことが多い | 丘疹または水疱を伴うことが多く、表面の盛り上がりがみられることもある |
| 症状の経過 | 製剤を剥がした後、1~2日で軽減ないし消失することがほとんど | 製剤を剥がした後も、症状が軽減せず、悪化し続ける場合が多い |
Ale l, et al. Adv.Ther. 26: 920-935, 2009を参考に作成
塩原 哲夫、大谷 道輝 監修. 臨床に役立つ経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A.(アルタ出版, 東京),(2012)
1 皮膚症状が起こるメカニズム
皮膚の肥満細胞から放出されるヒスタミンやプロスタグランジンなどの化学伝達物質が皮膚の赤みや腫れ、かゆみを引き起こします。
外からの刺激が加わると、皮膚の肥満細胞からヒスタミンやプロスタグランジンなどの化学伝達物質が放出されます。
これら化学伝達物質が真皮内の毛細血管に作用して、毛細血管の拡張が起こると皮膚が赤くなり、毛細血管の透過性が増大すると血漿成分が漏れ出して皮膚の腫れを引き起こします。
また、ヒスタミンが真皮内の知覚神経を刺激するとかゆみを感じると同時に、知覚神経から神経ペプチド(サブスタンスP)が放出され、肥満細胞を刺激して、さらにヒスタミンを分泌させるというかゆみの悪循環を引き起こします。
■ 皮膚の赤みや腫れ、かゆみが生じるメカニズム
塩原 哲夫、大谷 道輝 監修. 臨床に役立つ経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A.(アルタ出版, 東京),(2012)
2 刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の見分け方
皮膚炎の形状や表面の状態に注目し、時間経過による症状の変化を見極めることが大切です。
■ 刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の見た目の違い
- 製剤の形状にほぼ一致して紅斑が出現する。
- 通常は、正常皮膚との境界が明瞭。
- 丘疹や水疱はみられず、表面の盛り上がりはみられない。
- 紅斑は製剤の形状に一致して出現する場合もあれば、形状を超えて出現することもある。
- 増悪すると、正常皮膚との境界が不明瞭になることがある。
- 丘疹や水疱を伴い、表面の盛り上がりがみられる。
塩原 哲夫、大谷 道輝 監修. 臨床に役立つ経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A.(アルタ出版, 東京),(2012)
さらにそれら症状の時間的経過に基づいて判断します。特に両者の鑑別では時間経過による症状の変化が重要で、刺激性接触皮膚炎では製剤を剥がした後、1~2日で紅斑が薄くなって消失します(フェードアウェイ)。アレルギー性接触皮膚炎では、製剤を剥がした後も症状が軽減せずに悪化する場合が多いのが特徴で、時間経過とともに紅斑や丘疹・水疱がより著明になり、形状が拡大していく傾向がみられます。
■ 刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の時間経過による進展の違い
塩原 哲夫、大谷 道輝 監修. 臨床に役立つ経皮吸収型製剤を使いこなすためのQ&A.(アルタ出版, 東京),(2012)
3 皮膚炎の具体的対処法について
接触皮膚炎は、大きく刺激性とアレルギー性に分けられます。いずれも治療は外用ステロイドで行いますが、アレルギー性の場合は、経皮吸収型製剤に含まれる何らかの成分に対してアレルギーを発症している可能性があるため、使用休止または中止を検討する必要があります。
■ 経皮吸収型製剤による皮膚症状(刺激性接触皮膚炎)発現時における対応例
全身性の貼付薬による皮膚症状(接触皮膚炎)発現時における対応例
(日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン2009をもとに塩原氏が作成)、
日経ドラッグインフォメーション 2014年2月号pp.25-37
■ 経皮吸収型製剤の皮膚症状、その予防とスキンケア
杏林大学医学部 皮膚科学教室 名誉教授 塩原 哲夫 先生
経皮吸収型製剤の皮膚症状は、大半が刺激性接触皮膚炎と考えられ、適切な方法をとることで軽減・消失させることが可能です。 皮膚の副作用予防のためには、皮膚のバリア機能を高めるために、皮膚の水分保湿能を高め角質水分量を保つことを考慮したスキンケアが大切です。 日常的に水分保有能がある保湿剤を用いたスキンケアを徹底するだけでも、皮膚の副作用の発現を抑えることができます。 経皮吸収型製剤は極めて魅力的な投与経路であり、それを有効に活かすために皮膚独自の副作用についても十分な知識を持って使用するべきと思われます。
本剤の詳細は電子添文等DI をご参照ください。

