ヒス束心電図〈His bundle electrocardiogram〉

ヒス束は房室結節と刺激伝導系が右脚と左脚に分岐する点までを結ぶ線維で、短時間に一定方向で興奮が伝幡するため、心腔内に留置した電極カテーテルを用いてヒス束の電気的興奮を明瞭に記録することができる。ヒトのヒス束電位はScherlagらによって1969年に初めて記録され、心臓電気生理学的検査が発展する基礎となった。一般には電極カテーテルを経下大静脈的に右心房から右心室へと進め、時計回り方向のトルクを加えながらゆっくりとカテーテルを引き抜いていくと、大きな心室電位に数十msec先行するシャープな立ち上がりの電位としてヒス束電位が記録される。さらにカテーテルを引くと、ヒス束電位に先行する局所心房電位が記録できる。通常このように一対の電極で心房電位、ヒス束電位、心室電位が記録される部位にカテ-テルを留置して、伝導時間の記録、電気刺激に対する反応などを評価する(図)。房室ブロックでのブロック部位の決定や頻拍起源の同定、上室性頻拍のリエントリー回路解明に必須である。

標準的な心内心電図の表示(洞調律時と心室期外刺激時)