致死性心室性不整脈あるいは心臓突然死の予知において活用される指標であり、T波の形・波高または極性が1拍ごとに交代する心電現象である。日本語ではT波交互(交代)現象と訳される。心電図上のT波は再分極過程を反映するため、T-wave alternans(TWA)が出現することにはなんらかの再分極異常が生じていることになる。
心筋虚血と関連する現象として知られており、実験的には冠動脈結紮モデルにおいてTWAの経時的な顕在化が心室細動の発現につながることが示されている。また臨床的にも異型狭心症発症時、冠動脈インターベンションのバルーン拡張時、QT延長症候群などにおいてTWA顕在化と心室性不整脈の関連が報告されている。このような知見に基づき、心臓突然死をきたすような症例では安定期にも微小レベルでTWAを呈しているであろうという仮説から考案された指標がマイクロボルトTWA(M-TWA)であり、運動負荷心電図から高速フーリエ変換法によるスペクトル(周波数)解析を用いて検出する手法により多くのエビデンスが集積されている。心筋梗塞後の患者においては心機能の程度にかかわらず心臓死・不整脈イベントの予測に有用であることが示されている。また、低心機能患者に限定した欧米の臨床試験(ALPHA、MASTER、ABCD)においてTWAは総死亡あるいは心臓死の予知に有用であったが、不整脈イベントについては各試験において結果が異なり、有用性に関して一致はみられていない。日本循環器学会「心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)」ではTWAによる心臓突然死の予知は心筋梗塞後または低心機能の虚血性心筋症患者ではクラスⅡA、非虚血性心筋症または心不全患者ではクラスⅡBに位置づけられている。