Postexcitation waveとも呼ばれ、主にV1~V3誘導においてQRS波の終了直後に出現するnotchまたは結節である。不整脈原(源)性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy;ARVC)に特異的な心電図所見とされ、ARVC患者の約30%に認められたとする報告がある。1978年、FontaineらによってARVCの報告がなされた当時、すでにWPW症候群の典型的な波形がδ(デルタ)波と命名されていたために、このARVCに特徴的な波形は、ギリシャ語のアルファベット順でδの次にあたるεが用いられ、ε(イプシロン)波と命名された。ε波の成因は心室内の遅延伝導とされており、ARVC以外の疾患、たとえば心筋梗塞、肺高血圧症、サルコイドーシスでも認められることがある。ε波はあくまでもARVCの診断基準の大基準の1つにすぎず、実際のARVCの確定診断には、家族歴、心電図異常(脱分極異常および再分極異常)、不整脈、右室の機能的異常および形態的異常、組織学的特徴についての総合的な評価が必要である。ε波の実例を(図)に示す。