潜因性脳梗塞

潜因性脳梗塞とは、脳動脈硬化に起因する脳梗塞、もしくは心疾患に起因する塞栓症など既知の機序では説明が付かず、さらなる原因検索を進めた後にもその発症機序が明らかでない、あるいは原因が特定できない脳梗塞の分類である(脳卒中 41 : 417-441, 2019)。多くは何らかの塞栓性疾患による脳塞栓症と推定されることから、塞栓源不明脳塞栓症(embolic stroke of undetermined sources;ESUS)と呼称されることもある。

潜因性脳梗塞の重要な塞栓源として、潜在性心房細動や卵円孔開存があると考えられている。潜在性心房細動については高齢者において頻度が高いとされており、検出のために植込み型心電計を含めた十分な検査を行うことが重要である。卵円孔開存については潜因性脳梗塞の症例の約50%に併存するといわれているが、静脈血栓症も確認され奇異性脳塞栓症の確定診断に至る症例はわずかである。

従来は抗凝固療法による再発予防が選択されることが多かったが、2019年になり卵円孔開存の関与が疑われる潜因性脳梗塞のうちの再発高リスク群に対して、再発予防を目的としたカテーテル治療(経皮的卵円孔開存閉鎖術)が承認された。