INOCA〈ischemia with non-obstructive coronary arteries,冠動脈の閉塞を伴わない虚血〉/MINOCA〈myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries,冠動脈の閉塞を伴わない心筋梗塞〉

INOCAは狭心症状を有し非侵襲的検査で心筋虚血所見が認められるにもかかわらず、冠動脈造影検査で心外膜冠動脈に狭窄病変を認めない疾患である。INOCAには主に冠攣縮と微小血管障害の2つの病態が関与している。冠攣縮は心外膜冠動脈の内皮機能障害(内皮細胞からの一酸化窒素の産生低下)が関与すると考えられている。冠攣縮の診断には12誘導心電図やHolter心電図でST上昇を捉えることができれば診断可能であるが必ずしも容易ではなく、その場合には冠動脈造影検査を実施し、アセチルコリンやエルゴノビンによる冠攣縮誘発試験で確定診断する。微小血管障害は器質的障害(内膜肥厚や毛細血管密度の低下)、微小血管攣縮、外圧迫(浮腫や心肥大)により虚血が生じる。微小血管障害の診断基準は、狭心症状があること・閉塞性冠動脈病変がないこと・機能的画像診断により心筋虚血が証明されていること・微小循環障害が証明されていることが求められる。微小循環障害の証明に関して侵襲的検査では圧センサー付きガイドワイヤーを用いて、冠血流予備能(coronary flow reserve;CFR)もしくは微小血管抵抗指数(index of microvascular resistance;IMR)を測定することにより診断できる。

MINOCAは心筋虚血に伴う心筋逸脱酵素上昇などから心筋梗塞と診断されるにもかかわらず、冠動脈に閉塞性病変が認められない疾患である。女性に多くNSTEMI(non-ST elevation myocardial infarction)の発症形式をとる特徴がある。MINOCAの原因は多岐にわたり(プラーク破綻・冠攣縮・冠動脈解離など)、個々の症例における最適な治療戦略を構築するためにその原因を明らかにすることが必要である。