Marfan症候群は骨格系、眼、および心血管系に特徴的所見を有する先天性結合組織異常による全身性系統性疾患であり、弾性線維蛋白の一種であるフィブリリンの分子異常によると考えられている。常染色体優性遺伝の形式をとるが、約25%は家族歴を認めず、突然変異によるものである。診断に関しては、①遺伝性、②骨格系症状(高身長、クモ肢、クモ指、長頭型頭蓋、口蓋裂、漏斗胸、脊柱変形)、③眼症状(強度近視を伴う両側性の水晶体脱臼、網膜剥離)、④心血管系症状(大動脈弁輪拡大、僧帽弁逸脱、解離性大動脈瘤)の4項目のうち2項目を満たすものを該当とする。特に心血管系症状として大動脈の嚢胞性中膜壊死は特徴的であり、大動脈弁輪から上行大動脈に限局することが多い。その他に大耳介、横隔膜ヘルニア、自然気胸などがみられる。予後は大動脈病変の程度に依存し、大動脈弁閉鎖不全あるいは大動脈瘤が高度になれば手術の適応である。平均寿命は約32歳とされていたが、手術療法の進歩により予後は改善しつつある。