高安動脈炎(=大動脈炎症候群)

高安動脈炎は眼科医・高安右人が1908年に報告したことに端緒を有する大型血管炎である。高安動脈炎の他に大動脈炎症候群、高安病、脈なし病の呼称があったが、2015年に高安動脈炎へ統一された。厚生労働省の指定難病で患者数は約5,000名、新規発症数は200人前後/年、男女比は約1:9、女性の初発年齢は20歳前後にピークがみられる。

高安動脈炎は大動脈とその1次分枝に壁肥厚、狭窄・閉塞、拡大・瘤の血管リモデリングをきたす。病理学的特徴は、外膜の炎症性細胞の浸潤と線維性肥厚、中膜の平滑筋細胞消失、弾性線維破壊と膠原線維増加、内膜肥厚と線維化がある。自己免疫の関与、HLA-B52、B67の相関、IL-12p40MLXIL-6遺伝子の一塩基多型との相関が知られる。

症状は初期に発熱、頸部痛、全身倦怠感などの上気道炎様の症状を認め、不明熱として経過することがある。時間とともに血管病変に由来する症状が出現し、狭窄性病変では脳虚血症状(めまい、失神、視力障害)、上肢のだるさ、血圧左右不同、虚血性心疾患による狭心症状をきたし、拡張性病変では大動脈瘤や大動脈弁閉鎖不全症による心不全をきたす。潰瘍性大腸炎や結節性紅斑の合併もある。

「血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)」(JCS2017ガイドライン)では、造影CT、造影MRI、頸動脈超音波、ポジトロン断層(FDG-PET)の画像検査で大動脈とその1次分枝に多発性またはびまん性の肥厚性病変、狭窄性病変(閉塞)、拡張性病変(瘤)のいずれかを認め、関連症状を1つ以上認め、8つの除外すべき疾患を否定すると診断がなされる。

内科的治療はステロイドが基本だが、減量過程で半数以上に再燃がみられる。再燃時には免疫抑制剤または生物学的製剤を併用する。日本ではヒト化抗IL-6受容体抗体トシリズマブが汎用される(Ann Rheum Dis 77 : 348-354, 2018)。血管の狭窄や閉塞、大動脈拡張に伴う大動脈弁閉鎖不全症で内科的治療による制御が困難な症例では外科的治療法を選択することもある(JCS2017ガイドライン)。