解離性大動脈瘤〈dissecting aortic aneurysm〉

解離性大動脈瘤とは、動脈壁が中膜のレベルで動脈走行に沿って2層に剥離し、2腔となった状態と称される。隔壁(フラップ)によって、本来の動脈腔(真腔)と動脈壁内に新たに生じた腔(偽腔)の2腔が形成され、両腔は真腔から偽腔への入口部(エントリー)と偽腔から真腔への再入口部(リエントリー)と呼ばれる亀裂(tear)を介して交通している。動脈径の拡大がない間は大動脈解離と称するが、径が拡大して瘤化した場合には解離性大動脈瘤と称される。解離の原因はまだ不明で、動脈の脆弱性(中膜壊死)、背景因子(高血圧など)などの関連が指摘されている。本症の分類は解離の範囲やエントリー部分を参考にしており、Stanford分類やDeBakey分類が用いられている。また、偽腔の血流状態からみた分類、すなわち偽腔に血流が存在する偽腔開存型、偽腔内が血栓で閉塞して血流を認めない血栓閉塞型にも分類される。

解離の診断は、まず解離を疑うことから始まる。発症時は、胸痛や背部痛など何らかの臨床症状を伴うことが多いため、その際に心電図や胸部X線を用いて心疾患や他の胸部疾患を鑑別しつつ、解離を念頭においた診断手順をとる。胸部X線像において縦隔陰影の拡大、大動脈の石灰化、大動脈弓部の上方偏位では本症の存在が示唆され、胸部側面像では大動脈弓部の拡大がより明確となる。心電図では、心筋虚血の存在が判読され上行大動脈に解離がある場合、冠動脈起始部への解離の進展が考えられる。また、電気的交互脈の存在、血圧低下と脈圧の減少、奇脈は心タンポナーデの存在を疑わせる。次に行う検査は経胸壁心エコー検査で、大動脈起始部の解離診断には有用で、4cm以上の大動脈腔の拡大、解離腔の証明、flapの証明が可能な場合があり、大動脈弁逆流はドプラエコー法で容易に証明できる。Stanford B型では心エコー法の有用性は低く、解離が腹部大動脈に存在する例では腹部エコー図検査でflapや偽腔の存在が証明できる。Stanford A型、B型いずれであれ、胸腔内の解離の状態はエコー検査のうち経食道エコー検査を用いないかぎり有用な情報は得られない。胸部大動脈の解離の証明にはCT、特に造影CTが有用である。

本疾患の治療の原則は、急性期破裂、心タンポナーデ、臓器障害の予防である。このため、心タンポナーデ、冠動脈虚血、大動脈弁逆流、脳虚血などの重篤な合併症を引き起こすStanford A型は緊急外科的治療の対象となる。Stanford B型は降圧療法をはじめとする内科的治療となるが、臓器虚血症状を有する場合は外科的治療となる。ただしB型の中でもエントリーが胸部に存在しその血管径が4cm以上の場合、遠隔期に大動脈径の拡大を生じる予測因子であることが報告されており、このような症例は急性期に手術を検討する必要がある。降圧目標は、ニトログリセリン、ジルチアゼムなどの経静脈的な降圧薬を用いて尿量が維持できる最小の値が望ましい。

(参考:DeBakey分類/Stanford分類

製品情報一覧

  • ア行
  • カ行
  • サ行
  • タ行
  • ナ行
  • ハ行
  • マ行
  • ヤ行
  • ラ行
  • ワ行
  • やさしい心電図の見方
  • 心臓・血管病アトラス
  • 経皮吸収型製剤使用マニュアル
  • ビソノテープQ&A