真性大動脈瘤〈true aortic aneurysm〉

大動脈瘤は、動脈壁の全周または一部が生理的限界を超えて拡張した状態、あるいは正常最大血管径の1.5倍以上の径の拡大を有する状態、と定義されている(Johnstonらによる)。すなわち、胸部では4.5cm、腹部では3cm以上の径を有する例ということになる。また、大動脈瘤は部位や形態により(表)のように分類される。これらの分類法は瘤の原因や形態によって「治療方針が異なる」ためである。

大動脈瘤の分類

特に形態が重要で、①真性(血管壁成分からなる瘤)、②仮性(血管外にできた、血管内腔と交通する腔)、③解離性(血管壁が二層に剥離して、本来の血管腔以外の偽腔をもつ)に分類される(図)。胸部瘤の部位別発生頻度は、上行20~30%、弓部30~45%、下行25~30%、胸腹部10%程度とされている。腹部瘤は胸部瘤の約2倍の頻度とされ、その95%は腎動脈下部に生じる。胸部ならびに胸腹部瘤は50~60歳に多く、男女比は2.7~4:1であり、腹部瘤は60~70歳代に多く、男女比は5~8:1である。

大動脈瘤の形態

自覚症状は基本的には無症状であることが真性瘤の特徴である。多くは検診や他疾患受診時に胸部X線や腹部の触診、腹部超音波検査で偶然発見される。しかし、瘤の存在部位と大きさにより瘤周囲臓器への圧迫や瘤の増大、および瘤内の壁在血栓などによる種々の症状を呈し、それらの症状を契機に真性瘤がみつかることもあり注意を要する。胸部瘤では反回神経の圧迫による嗄声、星状神経節の圧迫によるHorner症候群、食道圧迫による嚥下障害、気管や気管支や肺の圧迫による咳嗽や血痰や呼吸困難、上大静脈の圧迫による神経痛様の疼痛などをきたすことがある。腹部瘤では消化管(特に十二指腸)の圧迫による腹部不快感や腹痛や嘔吐などがみられ、まれに尿管の圧迫による尿閉などをきたすこともある。また、瘤内の壁在血栓が遊離して末梢の塞栓症を起こし、四肢動脈閉塞による四肢痛や腸管膜動脈閉塞による腸管壊死などをきたすことがある。また、瘤内での血栓形成と乱流により、DIC(播種性血管内凝固症候群)を引き起こして点状や斑状出血などの症状を認めることもある。

診断は胸部瘤や胸腹部瘤において正側面2方向からのX線によりほぼ可能とされる。上行瘤の場合には右第1弓の突出、弓部瘤の場合には左第1弓の突出、下行瘤の場合には縦隔陰影の拡大が認められる。気管の偏位や圧排がみられることもある。CT検査は確定診断として必須の検査であり、正確な瘤径、瘤の範囲、動脈の蛇行の程度、壁在血栓の状態、壁の石灰化の有無などの情報が得られる。血管造影検査(digital subtraction angiography;DSA)は瘤の範囲や分枝との位置関係や末梢動脈の状態などの評価に有用とされる。その他、超音波検査やMRIが有用である。

本疾患の治療では瘤自体を根本的に改善させる内科的治療がないため、瘤の手術適応と至適時期の決定を常に考慮する必要がある。基本的に胸部瘤は瘤径が5.5~6cm以上、胸腹部は6cm、腹部瘤は4~5cmが待機的手術適応とされる。嚢状瘤は瘤径にかかわらず手術適応となることが多い。瘤破裂や切迫破裂ならびに瘤による合併症をきたした場合などは、早急の手術適応となる。

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