動脈管開存[症]〈patent ductus arteriosus;PDA〉

胎生期の動脈管が出生後も残存したもので、大動脈弓遠位端内側と左肺動脈起始部との間に存在し、通常大動脈側から肺動脈側への短絡を生じる(図)。短絡による容量負荷と感染性心内膜炎の併発を起こすことがある。まれではあるが瘤状に拡大し破裂することもある。大動脈から肺動脈への左右短絡によって肺血流量が増える(この短絡量は動脈管開存の大きさに依存する)。ある程度以上の太さがあれば左房左室への還流量が増え容量負荷となる。肺血流の著明な増加から肺高血圧となる例では乳児期に心不全症状が現れ、乳児期に心不全で死亡することがある。また、成人期に不整脈など心不全症状を現す例や、Eisenmenger症候群では突然死もあるが、通常自然予後は良好で、多くは無症状で経過する。男女比では女性に2~3倍多く、わが国の統計では先天性心疾患の3.6%にみられる。

動脈管開存症

聴診上、胸骨左縁上を中心に連続性雑音とⅡ音の亢進を聴取し、bounding pulseを呈する。心エコーでは動脈管を介して左肺動脈から主肺動脈のほうへ流れる短絡血流を認める。心臓カテーテル検査では肺動脈での酸素飽和度上昇を認め、上行大動脈造影で同時に動脈管を介して肺動脈が造影される。治療は左開胸で直視下に行う動脈管の結紮切断である。近年カテーテルによる動脈管閉鎖術も施行されている。心不全症状の出現した症例ではその時点で閉鎖術を行うが、無症状でも肺高血圧症、心不全、感染性心内膜炎を合併することがあり動脈管閉鎖術を施行する。しかしEisenmenger症候群では動脈管閉鎖術は禁忌である。