産褥性心筋症〈peripartum cardiomyopathy〉

心疾患の既往のない女性が妊娠・分娩を契機に拡張型心筋症様の病態を示すものであり、ときに重篤な心不全を発症する。妊娠による循環動態変化、妊娠中毒症、ウイルス感染、アレルギー、栄養障害などがその原因として考えられている。2007年の報告により、産褥性心筋症の患者においてカテプシンDによって切断されて生じる16kDaプロラクチンが増加しており、これが心筋内血管障害と心機能低下を惹起することが明らかとなり、こうした内分泌学的異常が原因の1つとも考えられる。症状は、呼吸困難・浮腫などの心不全症状や咳・喀血などの肺循環異常を示すことが多い。血栓・塞栓症が多く、肺塞栓の合併に注意する必要がある。胸部X線上、心拡大、肺うっ血、胸水を認め、心電図にてST-T異常、不整脈を認める。心筋生検では心筋細胞の変性、間質の浮腫・線維化を認めることがある。

治療は通常の心不全治療が中心となり、利尿薬、ジギタリス、血管拡張薬などを用いる。妊婦においてはCa拮抗薬、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の催奇形性に注意する必要がある。16kDaプロラクチンに対する治療として、抗プロラクチン薬であるブロモクリプチンの投与が有効であったとも報告されている。重症例は致死的であり、カテコラミン投与やIABP(大動脈内バルーンパンピング)、PCPS(経皮的心肺補助装置)が必要となる。治療抵抗性症例では、左心補助人工心臓装着下に心臓移植適応と判断されることもある。

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