不整脈原性右室心筋症は、遺伝的要因を主因とし、虚血、高血圧、弁膜疾患などの一次的な要因がなく、右室の拡大、収縮能低下をきたし、心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈を合併する疾患である。発生頻度は約5,000人に1人とされ、日本において心臓移植適応となる重症心不全患者のおよそ1~2%を占める。心筋病理組織では、心筋細胞の脱落、線維化、脂肪変性が特徴とされる 。
不整脈原性右室心筋症は、主に右室の機能障害を伴う疾患群と考えられてきたが、造影MRIをはじめとする画像診断の進歩により、心筋の障害は必ずしも右室に限局されず、左室機能障害、または両室機能障害を伴う場合もあることが明らかとなった。さらに、遺伝子解析の進歩により、致死性不整脈を伴う心筋症と、さまざまな遺伝子変異の関連が明らかとなった。これらの知見を踏まえ、より幅の広い不整脈を伴う心筋症が、従来の不整脈原性右室心筋症とともに、不整脈原性心筋症として包括的に定義されるようになっている。
不整脈原性心筋症のうち、右室優位な機能障害は、主に心筋の介在板に関わる遺伝子変異により生じ、左室を含めた機能障害は、細胞骨格や筋小胞体、イオンチャネルなどさまざまな細胞機能に関わる遺伝子変異により生じるとされている。不整脈原性右室心筋症の診断に関して、2019年に提起された修正Task Force診断基準では、心エコーやMRIによる右室壁運動異常、心筋生検における心筋細胞の脱落、心電図における右側前胸部誘導の陰性T波、イプシロン波、左脚ブロック型上方軸の非持続性または持続性心室頻拍、心筋症家族歴などが、主要診断項目として挙げられている。2020年には、心臓造影MRI所見や、左室機能障害を含めたより包括的なPadua診断基準が提唱されている。治療には、合併する心不全や不整脈に対して、薬物治療や、カテーテル・アブレーション、植込み型除細動器などの非薬物治療が行われる。