大動脈弁狭窄[症]〈aortic stenosis;AS〉

大動脈弁狭窄症は、大動脈弁自体の狭窄によるものと、弁上もしくは弁下の狭窄によるものとがある。弁性狭窄には先天性と後天性のものがある。先天性のものでは、二尖大動脈弁によるものが多く、幼少時には高度の狭窄を呈していないが、加齢とともに線維化・石灰化に伴う変化が生じ、狭窄症となる。後天性のものでは、リウマチ熱による炎症性の変化により弁の狭窄・可動性の低下を呈するもの、動脈硬化性の変化により弁の硬化・狭窄を生じるものがある。正常の大動脈弁口面積は3c㎡であるが、一般的にその4分の1となってから症状を呈するとされている。狭窄の程度は、左室と大動脈の収縮期における圧較差で評価され、弁口面積が0.5c㎡以下になると圧較差は50mmHg以上になるといわれている。

身体所見では第2肋間胸骨右縁から頸部にかけての振戦がみられることがあり、聴診では収縮期雑音として聴取される。狭窄した大動脈弁部の血流通過音(ejection click)はⅠ音とⅡ音の間に駆出性雑音として認められ、心房収縮はⅣ音として聴取される。心電図では左室肥大所見、すなわち左軸偏位・前胸部の高電位やストレイン型(ST低下とTは陰転化)が認められる。胸部レントゲン写真では、時に大動脈弁の石灰化を認めることがある。また、狭窄後拡張として上行大動脈の拡大がみられる。心臓超音波法では、弁の可動性や左心室の壁厚が評価でき、ドプラ法にて計測した弁口部の血流速度より左室-大動脈間の圧較差を算出することができる。心臓カテーテル検査では、左室-大動脈間圧較差の直接測定、心拍出量の計測から弁口面積が算出できる。また、左室造影により左心室の大きさや動き、弁の状態が評価可能である。冠動脈造影は本症における狭心痛の原因精査に必要である。

本症において臨床で問題となるのは心不全症状と狭心痛・失神症状である。狭窄による左心室の圧負荷は、長期にわたり肥大によって代償されるが、次第に左室の拡張期コンプライアンス低下から、拡張末期圧の上昇や最大流入速度の低下を認めるようになる。これを代償するため左心房の収縮は増大(a波増高)するが、心房細動の合併などでこの代償が破綻すると右心不全徴候が出現する。また、肥大心による心筋障害は狭心痛の原因となる。失神は、心拍出量低下に起因したAdams-Stokes症候群が原因である。これらの症状が出現した際の予後は、一般的に不良とされている。

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