不適切洞頻拍症候群(inappropriate sinus tachycardia;IST)は、「安静時に原因不明の洞性頻脈(心拍数≧100bpm)を一過性もしくは持続性に認め、動悸などの不快な症状を伴う症候群」と定義される。15~45歳の女性に多い(男性の4倍)。うつ病や不安神経症などの精神疾患の症状と重なるため、診断が難しい症例もある。良性疾患だが、IST誘発性心筋症の報告例もある。機序として、自律神経の異常や、神経体液性因子の修飾による洞結節機能異常が考えられている。
ISTは除外診断により診断する。①洞性頻脈の可逆的原因(脱水、貧血、甲状腺機能亢進症など)を除外、②head-up Tilt testにて体位と頻脈の相関から起立性低血圧と体位性頻脈症候群を除外、③携帯型心電計や長時間心電図にて、頻脈と症状の相関、頻脈開始と停止様式、心拍数トレンドから上室性頻脈を除外、④心臓超音波法にて器質的心疾患を除外する。
治療は、生活様式の改善や食事療法でISTのトリガーを避ける。薬物療法ではβ遮断薬、Ca拮抗薬、抗不安薬を用いる。近年、海外からイバブラジンの有効性が報告されている。保存的加療で効果が不十分な場合、カテーテル・アブレーションによる洞結節修飾を行う。分界稜に沿って洞結節は存在し、ISTの最早期興奮部位は分界稜上方にある。横隔神経麻痺に留意しつつ焼灼すると、心拍数が下がり、最早期興奮部位は下方に移動するので、さらに焼灼する。これを繰り返すが、エンドポイントは未確立である。分界稜下方の焼灼は洞結節障害につながり、十分な焼灼が難しいため、再発率が50%と高い。海外では心外膜側から分界稜対面をカテーテル・アブレーションしたり、胸腔鏡下に上・下大静脈、分界稜への心外膜アブレーションと、心内膜カテ―テル・アブレーションを組み合わせるハイブリッド療法も行われている。