左室拡張機能

左室拡張機能は、左房から左室への血液の流入を規定するもので、要素としては左室弛緩能、弾性反跳(elastic recoil)、左室スティフネス(左室の硬さ)または左室コンプライアンス(左室の柔らかさ)がある。

左室弛緩能は、主に等容性弛緩期から充満期早期に左室心筋がアデノシン三リン酸(ATP)を消費してCa2+イオンを筋小胞体に取り込むことで弛緩・伸展する能動的な能力である。左室内圧曲線の下行脚の時定数tau、等容弛緩時間〔isovolumetric(isovolumic) relaxation time;IRT〕が弛緩能の指標として用いられ、心エコー図での拡張早期僧帽弁輪最大移動速度(e’)や僧帽弁流入血流の拡張早期波(E波)の減速時間がそれらの指標と相関することが報告されている。

左室スティフネスは、左室充満における左室拡張末期圧の上昇に影響し、心臓線維化、心筋細胞のスティフネスが関与する。心筋細胞のスティフネスには構造蛋白であるタイチンのリン酸化などが関与する。左室スティフネスの指標としては、拡張末期圧容量関係から算出されるstiffness constant βが用いられ、左室後壁壁厚の変化指標であるdiastolic wall strainが相関することが報告されている。

左室拡張機能障害としては、拡張機能障害により上昇する左房圧との関連が報告されている左房容積、E/e’、三尖弁逆流最大血流速度、E波と心房収縮期波(A波)の流速比(E/A)と、弛緩能と関連するe’とを用いて間接的に拡張機能障害の存在やgradeが評価される。左室拡張機能障害の原因としては、冠動脈疾患による心筋虚血、心肥大による壁肥厚、内腔狭小化などの形態の変化がある。