冠血流予備能〈coronary flow reserve〉

冠血流量は、灌流圧が一定であれば血管抵抗により決まる。冠血管抵抗に対する心外膜側の太い動脈の関与は生理的状態では少なく、細動脈などの抵抗血管により規定される。反応性充血やジピリダモール、アデノシンなどの薬物による冠拡張でみられるように、冠血流は安静時の5~6倍程度まで増加しうる。労作などにより心筋酸素消費量が増加すると、細動脈が拡張し、冠血管抵抗を減じ血流量を増やすことにより供給を維持する。一方、冠灌流圧の変化に対しても、心筋酸素消費量が一定であれば70~130mmHgの範囲では冠血流量を一定に保持する働きがあり(autoregulation,自動調節能)、動脈硬化などによる80%程度までの内径狭窄では、その末梢部の圧の多少の低下にもかかわらず虚血とはならない。

冠血流予備能は50%狭窄ぐらいから徐々に低下してくる。生理的状態における心内膜側および心外膜側の血流分布は、心内膜側が心室内圧の影響を強く受けるが、抵抗血管が拡張しているため、やや大かほぼ等しいと考えられる。このため、冠拡張予備能は心内膜側で低下しており、血圧低下などにより容易に虚血に陥る。また、心内膜側の血流は心室内圧のため主に拡張期に流れ、頻脈など相対的に拡張期が短くなるとともに虚血が誘発されやすくなる。