血管トーヌス〈vascular tonus〉

血管トーヌスとは血管壁における収縮力の状態をいう。血管壁は血管平滑筋とエラスチンやコラーゲンなどの弾性物質を含む結合組織で構成されており、そのトーヌスが維持されている。血管平滑筋は能動的張力で血管径を変化させて血流量を調節し、弾性物質は血管内圧から生じる血管壁の張力に対して血管を保護する役割を果たしている。冠動脈も含めて血管平滑筋のトーヌスの変化は、Ca2+の増減により行われている。生体内では水素は強力なCa2+拮抗作用を有する。水素イオンが増加あるいは減少することにより、Ca2+の作用は抑制または促進され、血管は拡張や収縮を起こす。代謝が亢進すると、代謝産物である水素イオンの産生は増加する。

冠血管のトーヌスは、主に心筋代謝により調節されている。心筋代謝が亢進すると冠動脈は拡張し、心筋代謝が低下すると冠動脈は収縮する。一方、血管自体のトーヌスの調節は、主に平滑筋細胞自身にあって細胞内自由Ca2+量に依存している。血管平滑筋のトーヌスは血管平滑筋に対して直接的に作用する自律神経を介した神経伝達物質、オータコイド、ホルモンや、内皮細胞が産生分泌するNO(一酸化窒素)、内皮由来過分極因子(endothelium-drived hyperpolarizing factor;EDHF)、プロスタサイクリン(PGI2)、C型Na利尿ペプチド(CNP)、エンドセリン(ET)-1など多くの生理活性物質によって間接的にも調節されている。