循環器用語ハンドブック

PDE(ホスホジエステラーゼ)阻害薬〈phosphodiesterase inhibitor〉

PDEは、cAMPやcGMPの環状リン酸ジエステルを加水分解する酵素であり、11のサブタイプがある。循環器領域で現在用いられるのは、細胞内のcAMPの分解に関わるPDE3を阻害することで、cAMP濃度を増強して心筋収縮力増強作用と血管拡張作用を有する薬剤と、細胞内のcGMPの分解に関わるPDE5を阻害することで、cGMP濃度を増強して血管拡張作用を有する薬剤である。

PDE3阻害薬は、カテコラミンに比し強心作用は弱いが、心筋酸素需要の増加は少ないとされ、主に心不全で用いられる。外向きKチャネル電流の抑制による活動電位の延長作用があり、強心作用を発揮する量では心拍数を増加させない。本邦では、ミルリノン、塩酸オルプリノンが使用可能である。ベスナリノンを用いた1997年のVEST試験では長期予後を悪化させることが示されており、血行動態の改善を図るための短期的な投与が望ましいと考えられている。

PDE5阻害薬は主に肺動脈に作用し、一酸化窒素(NO)を介したcGMP濃度の増強から肺動脈圧の低下作用を有し、本邦では肺高血圧症の適応症で、シルデナフィル、タダラフィルが使用可能である。肺血管への選択性は他の血管拡張薬に比して高いが、全身にも作用することからレイノー現象や勃起障害、前立腺肥大などでも使用され、体血管への作用による体血圧の低下に注意が必要である。また、cGMP系は心臓にも存在し、心筋細胞におけるタイチンのリン酸化に関与し拡張機能改善作用や、心筋線維化の抑制作用が基礎的検討では示されており、心不全への効果も期待されるが、シルデナフィルを用いたRELAX(Phosphodiesterase-5 Inhibition to Improve Clinical Status and Exercise Capacity in Diastolic Heart Failure)試験では左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)における運動耐用能の改善効果は示されなかった。

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