循環器用語ハンドブック
抗凝固療法〈anticoagulation〉
血液凝固系の抑制による抗血栓作用を目的として行われる治療で、臨床では主に静脈または皮下注薬であるヘパリンと経口抗凝固薬が用いられる。
①ヘパリン:アンチトロンビンⅢと結合することにより、血液凝固因子の活性を阻害し、抗凝固作用を示す。ヘパリンの抗凝固作用を判定するためには、内因性凝固カスケード(プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、第Ⅻ、Ⅺ、Ⅸ、Ⅷ因子)および最終共通カスケード(第Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ因子、フィブリノゲン)の凝固活性能の評価法であるAPTT(activated partial thromboplastin time)が用いられる。臨床での治療域は、正常対照とのAPTT比を1.5~2.5倍程度にコントロールすることが推奨されている。
②ワルファリン:ビタミンK還元酵素を阻害することにより、第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の生成を阻害し抗凝固活性を示す。肝臓における凝固因子の完成を阻害するため効果持続時間が長く、効果も安定している。深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、心房細動症例の脳梗塞予防、人工弁置換術後の血栓イベント発症予防などの病態において有用性と安全性が確立されている。一方、効果発現に個人差が大きい、併用薬に影響されるなどの問題があり、国際標準化プロトロンビン比(prothrombin time-international normalized ratio;PT-INR)による薬効モニタリングを要する。
③非ビタミンK阻害経口抗凝固薬(non-vitamin K antagonist oral anticoagulant;NOAC):トロンビン阻害薬(ダビガトラン)と第Ⅹa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)があり、ワルファリンと同等以上の有効性・安全性が示されつつある。概して半減期が短く(8~14時間)、固定量での投与、採血によるモニタリング不要、頭蓋内出血のリスクが低いなどの利点がある。しかしながら出血の際に迅速に使用可能な拮抗薬がないこと、腎機能低下例に関して使用困難な場合が多いなどの問題点も残存する。

