循環器用語ハンドブック

ジギタリス製剤〈digitalis〉

ジギタリスは心筋細胞膜のNa-K ATPaseを阻害することにより、Na/Ca2+ 交換機構を介して細胞内Ca2+ 濃度を増加させ、強心作用を発揮する。この作用は他の強心薬に比べると非常に弱い。刺激伝導系に対しては、迷走神経興奮および心臓に対する直接作用により、房室伝導を抑制し心拍数を減少させる。また、圧受容体反射の改善効果やレニン-アンジオテンシン系に対する分泌抑制効果もある。ジギタリスの適応となる疾患は、慢性心不全、心房細動をはじめとする頻拍性上室性不整脈である。ジギタリス中毒、房室ブロック、閉塞性肥大型心筋症、およびWPW症候群に合併する頻拍性上室性不整脈に対しては禁忌である。

一般的に使用されているのはジゴキシン、ジギトキシン、メチルジゴキシンおよびデスラノシドで、年齢、肝機能や腎機能障害の有無などを考慮して薬剤の種類および投与量を決定しなければならない。効果判定は、自覚症状、身体所見の改善、胸部X線上の心胸郭比の改善、心電図上のPR延長、ST下降、QT短縮などの変化を目安にする。客観的な指標として血中濃度モニタリングが有用である。洞調律の慢性心不全を対象に行われた大規模臨床試験であるDIG試験(Digitalis Investigation Group trial、1997年発表)では、ジギタリスの予後改善効果は認められなかったが、心不全死あるいは心不全増悪による入院頻度を有意に減少させたと報告されている。

ページトップへ