循環器用語ハンドブック
遺伝子治療
遺伝子を補充・付加することによって生体の機能不全を改善させる治療法を指す。目的遺伝子の投与方法の違いから、遺伝子を搭載したベクターを生体内へ投与する方法(in vivo)と、遺伝子を導入した細胞を生体内へ投与する方法(ex vivo)に大別される。また、広義の遺伝子治療には、CRISPR-Cas9システムなどを用いたゲノム編集も含まれる。
特に機能喪失型変異による遺伝性疾患に対して、遺伝子治療によって欠損遺伝子を補充するという治療アプローチは、最も根治的であり治療効果が強く期待できる。さらに遺伝子治療の対象疾患は遺伝性疾患に限られず、癌・循環器疾患・神経変性疾患などに対する新たな治療法としても開発が進められている。実際にex vivo養子免疫遺伝子治療であるキメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor-T cell;CAR-T)療法は、再発または難治性のB細胞性悪性腫瘍に対して驚くべき奏効率を示し国内で薬事承認されている。
遺伝子治療に使用されるウイルスベクターとして、レンチウイルスベクター・レトロウイルスベクター・アデノウイルスベクター・アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus;AAV)ベクターなどが挙げられるが、遺伝性疾患に対するin vivo遺伝子治療に関する臨床研究・治験では現在のところ、安全性・有効性の観点からAAVベクターが主に用いられている。このAAVベクターは、終末分化した非分裂細胞において高効率の遺伝子導入と長期間の遺伝子発現を達成できるため、心疾患や中枢神経疾患に対する遺伝子治療における有用性が期待される。

