循環器用語ハンドブック

心筋細胞シート治療

心不全患者に対して、シート状に培養した細胞を移植する治療の総称で、再生医療等製品として保険診療で行うことができる自己骨格筋芽細胞シート(Terumo社よりHeartSheet®という商品名で製造販売)や、医師主導治験として行われているヒト誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)由来心筋細胞シートがある。自己骨格筋芽細胞シートは、患者自身の骨格筋を採取し、筋芽細胞をシート状に培養、調整したうえで、開胸手術下に患者の心臓表面に貼り付けて使用する再生医療等製品である。

2011年に、左室駆出率が低下した重症心不全のため左室補助人工心臓が植込まれた症例に対して移植され、世界で初めてのヒト臨床応用例として報告された。2015年には、自己骨格筋芽細胞シートを用いた第Ⅱ相多施設前向き臨床試験の成績が報告された。国内3施設において、自己骨格筋芽細胞シートが虚血性心疾患による重症心不全をきたした7症例に移植され、左室駆出率や6分間歩行距離を改善し得ることが報告された。これらの臨床成績を踏まえ、薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療の効果が得られず、NYHA心機能分類がⅢ度またはⅣ度かつ、安静時における左室駆出率が35%以下の虚血性心疾患による重症心不全に対して、再生医療等製品として保険償還された。

また2020年には、自己骨格筋芽細胞ではなく、iPS細胞由来心筋細胞シートが重症心不全症例へ移植された。本臨床試験では、京都大学iPS細胞研究所で作成された健常ドナー由来iPS細胞が使用され、心筋細胞に分化させた後、3枚の心筋細胞シートとして左室前壁から側壁の心外膜に移植された。本症例では、6ヵ月~1年後にかけて、NYHA心機能分類Ⅲ度からⅡ度への心不全症状の改善が得られ、シート移植部位の心収縮能が改善したことが報告されている。サイトカインの分泌などによる血管新生効果が、心筋細胞シートによる心機能改善効果の機序と考えられている。

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