循環器用語ハンドブック

免疫抑制剤〈immunosuppression〉

心臓移植の臨床成績は、当初ステロイドの単剤にて行われていた1960年代から、免疫抑制剤の開発を契機に飛躍的に向上してきた。特に1980年シクロスポリン(CSA)が臨床的に心臓移植に応用されてからは、それまで1年生存率が60~80%にとどまっていたのが90%を超える施設が増加し、心臓移植の安全性は飛躍的に向上した。

移植後3ヵ月以内が最も拒絶反応を発症しやすいので、この間比較的多量の免疫抑制剤を投与し、その後漸減する。移植直後は、腎機能が低下したり、感染症に罹患しやすかったりするので、ステロイド、CSAともに静脈内投与を行い、循環動態の安定、経口開始に伴い、経口薬に変更するのが一般的である。現在、心臓移植後の免疫抑制療法は、他の臓器移植と同様、CSAかタクロリムス(FK506)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)かアザチオプリン(AZP)、プレドニゾロン(PRD)の3剤併用療法が基本となる。最近では、AZP、MMFの代替薬としてシロリムス(Rapa)、エベロリムス(RAD)といった新しい免疫抑制剤の心臓移植への臨床応用が始まり有効性が報告されつつある。Rapaについては、TOR(target of rapamycin)inhibitorとして働くため、CSAやタクロリムスの代替薬・救済薬としても期待されている。また、これらの薬剤は血管内皮細胞の増殖を抑制するので、移植後冠動脈硬化症の予防または治療薬としても注目されている。急性拒絶反応の治療として、ステロイドパルス療法、ムロモナブ-CD3、抗胸腺細胞抗体(ポリクローナル抗体)、抗ヒトリンパ球ウマ免疫グロブリンがある。定期的に心筋生検を行い、他の検査で拒絶反応が疑わしい場合にも心筋生検を行って方針を決定し、国際心肺移植分類のgrade3以上の変化を認めた時点で急性拒絶反応の治療を行う。

ページトップへ