循環器用語ハンドブック
薬剤溶出性バルーン〈drug eluting balloon;DEB〉
経皮的冠動脈インターベンション術(PCI)には、2004年3月の国内初の承認以降、薬剤溶出性ステント(drug eluting stent;DES)が広く用いられるようになった。しかしDESは、再狭窄率をそれより以前の金属ステント(bare metal stent;BMS)と比較して低下させたものの、遅発性・超遅発性ステント血栓症を発症するリスクを有し、それを回避するために長期的に2剤併用抗血小板療法を続けることによる出血性合併症増加のリスクという新たな問題を引き起こした。またそれに加え、ステント治療にはステント内再狭窄(in-stent restenosis;ISR)、小血管、分岐部、屈曲部や可動部などの不向きな病変が存在する。それら不向き病変に対する治療補完手段として、最少量の薬剤と造影剤をバルーンカテーテルに塗布し、病変まで局所搬送させるコンセプトから薬剤溶出性バルーン(DEB)が開発された。
日本でははじめて、SeQuent® Please DEBが2013年7月に認可され、2014年4月からISRに対する血行再建術目的にのみ保険適応となった。このバルーン表面にはパクリタキセル(3μg/mm2)とイオプロミドがコーティングされており、通常の経皮的冠動脈形成術用バルーンにより前拡張を行った後、病変部位で少なくとも30秒間の拡張を行い、血管内膜へ薬剤を到達させる必要がある。ISR患者(BMS 60.6%, DES 39.4%)を対象にした国内臨床試験成績では、主要評価項目である治療24±2週の標的血管不全発生率が、対照群31.0%に対しDEB群6.4%であり、副次評価項目の主要心事故、標的病変再血行再建術発生率、再狭窄率、遠隔期損失径もDEB群で有意に低かった。
またISRの再拡張により、ステントストラットが血管に再露出することによる血栓形成性励起の可能性を危惧し、抗血小板療法については現在のところ国内臨床試験と同様、術後12週間の2剤併用療法が推奨されている。しかし、至適2剤併用期間については諸説あり今のところ不明である。ほかにも、論文で示されている24ヵ月以降の長期予後についても不明であるという問題点も残されている。

