循環器用語ハンドブック
冠動脈ステント〈coronary stent〉
冠動脈ステントは金属製のコイルあるいは網目状の円筒で、冠動脈内に留置することにより血管を拡張し内腔の開存を確保するものである。冠動脈ステントは1980年代後半に開発・臨床応用され、その後の抗血小板療法の導入とともにそれ以前に行われていたバルーン拡張のみの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の大きな問題であった急性冠閉塞を予防することに成功した。その後の新たなデバイスが多く開発されたnew device時代においても治療手技の容易さと安定した治療成績によって他のデバイスに対し優位性を示し世界中で広く使用されるようになった。その後ベアメタルステント〔bbare metal stent;BMS、初期のステントは現在使われている薬剤溶出性ステント(drug eluting stent;DES)と区別するためベアメタルと呼ばれる〕で生じる数ヵ月から1年でのステント内再狭窄を克服するため、その機序である新生内膜増殖抑制を目的としたDESが開発された。日本では2004年よりDESが使用可能となりステント内再狭窄は著しく軽減した。ただ初期のDESでは治療後1年以上経過したのちのステント血栓症(stent thrombosis;ST)という新しい問題が確認され、現時点ではステントプラットフォーム、薬剤、薬剤を金属ステントに付着させるためのポリマーの3要素を改善し再狭窄を低減したままSTを減少させた新しい世代のDESが多く開発され臨床現場で広く使用されている。
DESは金属が冠動脈内に遺残するという根本的な限界をもつことから数年間で生体吸収される冠動脈拡張デバイス、生体吸収性スキャフォールド(bioresorbable vascular scaffold;BVS)が開発された。本邦においてもBVSの臨床治験が行われ、近い将来DES・BVSの両者を用いたPCIが行われ新しい時代のDESの使用方法が明らかにされると思われる。

