循環器用語ハンドブック

HMG-CoA還元酵素阻害薬〈HMG-CoA reductase inhibitor〉

ヒト血中のコレステロールはその8割程度が肝臓において生合成されているが、この反応の律速酵素がHMG-CoA(hydroxymethyl-glutaryl coenzyme A)還元酵素であり、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は、この酵素を拮抗阻害する。この生合成の抑制により肝細胞内のコレステロールプールが減少し、血中からコレステロールを含むLDLを取り込むためLDLレセプターが発現増加しターンオーバーが亢進する結果、血清コレステロール濃度は著明に低下する。血清コレステロール値の改善に伴い血管内プラークのコレステロール含量が減少し、プラークが安定化することから心血管イベントが抑制されると考えられている。また最近では、pleiotropic effectと総称されている内皮細胞・マクロファージの機能の改善、抗血小板作用、抗炎症作用に関しても検討が進められている。

スタチンによる心血管イベントの一次・二次予防効果は、数々の臨床試験において確認されており、高コレステロール血症のない患者においてすら有効性が報告されている[LIPID(Long-Term Intervention with Pravastatin in Ischaemic Disease)study]。これら内外のさまざまな試験結果から日本動脈硬化学会では2002年に動脈硬化性疾患ガイドラインを策定した。この中で狭心症既往歴のある患者においては血清LDL濃度の目標を100mg/dL以下にするよう推奨しているが、これもJ-LIT(Japan Lipid Intervention Trial)studyなどのわが国独自の臨床試験によりその有効性が確認されている。この目標の達成のため、より強力なストロングスタチン(アトルバスタチン、ピタバスタチンなど)が必要なことが多い。アトルバスタチンでは積極的なコレステロール低下療法を行うとさらに心血管イベントが抑制され[ALLIANCE(Aggressive Lipid-Lowering Initiation Abates New Cardiac Events)study]、軽度の冠血管狭窄であれば経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と同等の予後が得られるとの報告もある[AVERT(Atorvastatin Versus Revascularization Treatments) study]。また、ピタバスタチンにはコレステロール値の低下のみならず中性脂肪値の低下、HDLコレステロール値の上昇効果も強く認められており、近年注目されているメタボリックシンドロームを有する患者の一次・二次予防にも威力を発揮すると期待される。

スタチンには比較的副作用は少ないが、ときに横紋筋融解症がみられることがあり、腎機能低下例や他の高脂血症改善薬との併用には注意が必要であり投与初期には血液検査を行うことが望ましい。また、アトルバスタチンは糖尿病が増悪したとの報告もあり、これもまた注意が必要である。

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