循環器用語ハンドブック
Kチャネル開口薬(オープナー)〈K[channel]opener〉
血管平滑筋のアデノシン三リン酸(ATP)感受性Kチャネルを開口し膜電位を過分極することにより、電位依存性CaチャネルからのCa2+ の細胞内流入を抑制し、その結果、血管平滑筋の弛緩が起こり血管が拡張する。特に、比較的細い冠動脈に対して拡張作用を有している。ニコランジルは日本で開発された世界初のKチャネルオープナーであり、現在臨床で唯一使用できる薬剤である。硝酸薬と同様に狭心症に対して用いられるが、血管拡張機序が硝酸薬と異なるために耐性が生じにくく、作用が緩徐で血圧の低下が少ないなどの特徴を有している。また冠血管以外の末梢血管の拡張作用もあることから心不全治療への応用が期待されている。さらに実験レベルでは虚血再灌流モデルにおいて心筋梗塞サイズの縮小効果が認められている。
安定狭心症患者に対しニコランジル投与を行い冠イベントの発症抑制効果を検討したのが、英国で行われたIONA(Impact Of Nicorandil in Angina)試験(Lancet 359:1269-1275、2002)である。患者数5,126人に対してプラセボおよびニコランジル40mgを投与し平均追跡期間1.6年で検討された。その結果、一次エンドポイント(冠動脈心疾患死、非致死性心筋梗塞、胸痛による緊急入院など)はニコランジル群337例(13.1%) vs.プラセボ群398例(15.5%)であり(ハザート比0.83、p=0.014)、ニコランジル群で有意な抑制を示した。また、急性冠症候群の発症[156例(6.1%) vs.195例(7.6%)、ハザート比0.79、p=0.028]および全心血管イベント発生[378例(14.7%) vs.436例(17.0%)、ハザート比0.86、p=0.027]をいずれも抑制し、有意に冠イベントを抑制しアウトカムを改善している。

