循環器用語ハンドブック

β遮断薬〈β-blocker〉

心筋にはβ1受容体が、血管平滑筋にはβ2受容体が多く存在する。心筋β1受容体が刺激されると心拍数の増加、心筋収縮力および収縮・弛緩速度が増加する。また心臓各部位の不応期は短縮し、心室では細動閾値が低下する。β2受容体刺激では血管拡張が起こる。

臨床的にβ遮断薬は、①降圧、②労作性狭心症発作予防、③心筋梗塞における梗塞サイズ縮小と二次予防、④頻脈性不整脈治療、⑤慢性心不全治療、の目的に使用される。

降圧:心臓β1受容体に作用し、陰性変力作用により降圧する。原則として伝導障害、気管支喘息、閉塞性肺疾患、閉塞性動脈硬化症の合併症例では使用できない。

労作性狭心症発作予防:心臓β1選択性で、ISA(intrinsic sympathetic activity、内因性交感神経刺激作用)(-)のものが望ましい。陰性変力・陰性変時作用により労作時における心筋酸素需要を減少させ、狭心症発作を予防する。

心筋梗塞における梗塞サイズ縮小と二次予防:急性心筋梗塞発症早期のβ遮断薬投与により、梗塞サイズ縮小、合併症発生率低下、短期死亡率が減少する(First International Study of Infarct Survival;ISIS-1、1986年発表)。また、心筋梗塞既往例に対するプロプラノロールの投与では、再梗塞の予防、心臓死が減少することが報告されている(β-Blocker Heart Attack Trial;BHAT試験、1982年発表)。Sorianoらのメタアナリシス(Prog Cardiovasc Dis 39:445-456、1997)による解析では、1)β1選択性はあり、2)ISAなし、3)MSA(membrance stabilizing activity、膜安定化作用)なし、のほうがよいと報告されている。わが国では、心筋梗塞再発予防に対するβ遮断薬の使用頻度がまだ低く、積極的取り組みが必要である。

頻脈性不整脈治療:上室性および心室性の頻脈性不整脈に有効である。通常は単独では心房細動・心房粗動の停止には使用しない。心房細動・心房粗動時の心房心拍数は変化させないが、房室伝導時間の延長作用のために心室心拍数を減少させる。

慢性心不全治療:陰性変力・陰性変時作用を有するため、心不全患者への使用は禁忌とされていた。しかし、MDC試験(Metoprolol in Dilated Cardiomyopathy Trial、1993年発表)、USカルベジロール試験(U.S. carvedilol Heart failure Study、1996年発表)など数々の臨床治験の結果、年間死亡率で30%以上の生存率改善効果を示し、日本でもMUCHA(Multicenter Carvedilol Heart Failure Dose Assessment)試験が行われて全般改善度に有意差が得られている。このようにβ遮断薬投与群で、どの試験でも約34~35%の心不全増悪の防止、突然死の減少効果が確認され、今日の慢性心不全治療においてβ遮断薬療法は欠かせない治療となっている。BETACAR(Betaxolol Versus Carvedilol in Chronic Heart Failure)studyにおいて、ベタキソロールのように血管拡張作用を有しβ1選択性の高いβ遮断薬と、カルベジロールつまり血管拡張作用はもつがβ1選択性のないβ遮断薬が比較されたが、β1選択性と非選択性にかかわらず、ISAがないものであれば、有効であることが示された。処方例としては、基本的には入院のうえ、メトプロロール20mg×2/日、ビソプロロール1.25mg/日、カルベジロール2.5mg×2/日程度から開始し、心不全の悪化、過降圧がないことを確認しながら慎重に漸増していく。

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