循環器用語ハンドブック

ミオシンアクチベーター/ミオシンインヒビター

心筋収縮性低下をきたす代表的疾患は、拡張型心筋症や虚血性心疾患に伴うHFrEFであり、収縮性亢進をきたす代表的疾患は肥大型心筋症(HCM)である。心筋収縮性異常に対する従来の薬剤は、細胞膜受容体や細胞質内の酵素に作用して細胞内Ca動態を変化させることで間接的に心筋収縮を制御する。一方、ミオシンアクチベーターとミオシンインヒビターは、直接的サルコメア制御剤に分類される新しいタイプの心筋収縮性制御剤である。これらは、心筋収縮の構造的・機能的最小単位であるサルコメアの構成蛋白質であるミオシンⅡに作用して、心筋収縮性を直接的に制御する。

低心拍出量による組織低灌流を伴う重症心不全患者に対してカテコラミンやホスホジエステラーゼ(PDE)Ⅲ阻害薬が用いられているが、使用に伴う細胞内Ca濃度増加に付随した副作用(不整脈、頻脈、虚血、突然死などによる長期予後の悪化)が臨床的課題であった。Omecamtiv mecarbil (OM)はfirst-in-classの直接的サルコメア活性化剤であり、細胞内Ca動態を変化させずに心筋サルコメアの収縮性を直接的に増強することができる。実際に、OMはHFrEF患者の心不全イベントと心血管死の複合発生率を低減させ(GALACTIC-HF試験)、その有効性は左室駆出率が低いほど高いことが報告されている。さらに、予後の悪化は認めておらず、新しく安全な強心薬として期待されたが、米国食品医薬品局(FDA)の承認は下りなかった。

一方、HCMに対する薬物療法としては、β遮断薬、Ca拮抗薬、Naチャネル遮断薬などが使用されてきたが、予後改善効果は認めない。Mavacamtenは心筋型ミオシン重鎖のATPase活性の特異的阻害薬として開発されたアロステリック心筋ミオシン阻害薬であり、心筋細胞特異的に濃度依存的な収縮性抑制効果を発揮する。マウスのHCMモデルでは、過剰な心筋収縮性の正常化と、心肥大・心筋線維化の抑制効果を認めている。閉塞性HCM患者を対象としたEXPLORER-HCM試験では、左室内圧較差の劇的な減少と運動耐用能の改善効果が明らかとなっている。

ページトップへ