循環器用語ハンドブック

sGC刺激薬

NO(一酸化窒素)-sGC(可溶性グアニル酸シクラーゼ)-cGMP(環状グアノシン一リン酸)シグナル伝達経路は、心血管系の重要な調節因子の1つであり、活性化されることで血管平滑筋の弛緩による血管拡張、心肥大および線維化の抑制などに働く。この経路は血管内皮細胞においてendothelial nitric oxide synthase(eNOS)によりNOが産生されることから開始され、NOによるsGCの活性化によりcGMPが産生される。細胞質内cGMP濃度の上昇は、cGMP依存性蛋白質リン酸化酵素(protein kinase G ; PKG)を活性化させ、上記の作用を発揮する。

心不全患者においては、心拍出量の低下に起因する組織低灌流により血管内皮機能が障害されており、NO-sGC-cGMPシグナル伝達経路の活性低下およびNOの生物学的利用能低下がさらなる心不全の悪化に関与していると考えられる。sGC刺激薬はNO非依存的に直接sGCを刺激する作用だけでなく、NOとsGCの結合を安定化させNOに対するsGCの感受性を高める作用があり、心血管保護作用が期待されてきた。

以前から肺高血圧治療薬として使用されているリオシグアトに比して作用時間の長いベルイシグアトは、心不全増悪の既往を有する左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)を対象とした第Ⅲ相臨床試験(VICTORIA試験)において、心不全標準治療に追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを有意に減少させることが明らかになった。米国AHA/ACC/HFSAの「心不全管理ガイドライン2022年版」では、標準治療への追加薬物療法として取り上げられており、本邦でも慢性心不全治療薬として使用が開始されている。

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