循環器用語ハンドブック
血管拡張療法〈vasodilatation therapy〉
左心不全に対して、前負荷および後負荷の軽減目的で行う。肺血管拡張作用により、前負荷が軽減し肺うっ血の改善が得られる。また、全身抵抗血管に対する拡張作用により後負荷軽減が得られる。急性心不全で肺動脈圧高値であるが心拍出量低値の状態では、前負荷軽減により心拍出量が低下する場合があり、このような症例には慎重に投与するべきである。
静注薬としては硝酸薬、Ca拮抗薬、PDEⅢ(ホスホジエステラーゼⅢ)阻害薬が用いられる。硝酸薬は静脈系の容量血管を主として拡張し、肺毛細管圧を減少させる。Ca拮抗薬も同様に血管平滑筋の拡張作用があり、後負荷を軽減する。PDEⅢ阻害薬は、血管拡張作用と心収縮力増加作用を併せ持つ心不全治療薬として使用される。細胞内サイクリックAMP(cAMP)の分解酵素であるPDEⅢを選択的に阻害することにより、血管平滑筋ではcAMPの増加、Aキナーゼ活性化を介して血管平滑筋を弛緩する。心筋細胞内のcAMP増加により、カテコラミン様の強心作用も併せ持つ。
経口薬としてはACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、長時間作働型Ca拮抗薬が用いられる。前二者はともに強力な内因性血管収縮物質であるアンジオテンシンⅡの作用を抑え、血管の拡張を得る。さらに交感神経活性や心肥大、心筋線維化の抑制作用などをもち心不全の予後を改善させる。短時間作動性のCa拮抗薬は心不全治療には適さないが、近年、反射性交感神経活性化作用をもたないアムロジピンが開発された。ジギタリス、利尿薬、ACE阻害薬を併用下の心不全患者を対象に行ったPRAISE(Prospective Randomized Amlodipine Survival Evaluation)試験(1996年発表)では、アムロジピンの心不全に対する有用性が認められた。

