アセチルコリン負荷〈acetylcholine(ACh)stress〉

冠攣縮性狭心症が疑われる患者において、その誘発試験に寒冷負荷や過換気負荷が行われてきたが、誘発率は十分高くはない。それに対し、アセチルコリンの冠動脈内投与は冠攣縮発作の誘発率が高い。

冠動脈造影を施行し、有意な狭窄のないことを確認した後、攣縮の起こりやすいと推測される(あるいは両方の)冠動脈に選択的にアセチルコリンを投与する。1つの手順としては、まず右冠動脈に生理食塩水で全量を5mLとした10μg、20μg、50μgのアセチルコリンを、次に左冠動脈に20μg、50μg、100μgの順にそれぞれ20秒間かけて、発作が誘発されるまで注入する。3分以内で誘発されることが多い。発作はニトログリセリンの冠内投与により速やかに回復する。アセチルコリンのほかにエルゴノビンを使用する方法もある。ともにsensitivity、specificityは90%を超える。攣縮が冠動脈起始部に誘発された場合、あるいは多枝に同時に出現した場合、著明な心筋虚血から致死的不整脈、ポンプ不全をきたすことがあるため、設備とスタッフの充実が要求される。