僧帽弁逸脱とは、僧帽弁の一部が収縮期に左房側に逸脱するものとされ、古典的な診断基準として僧帽弁帆が弁輪線(大動脈弁と僧帽弁前尖の接合部と、後尖付着部を結ぶ線)を越えて左房側に落ち込んでいるものとするGilbertの基準がある。多くは特発性であるが、Marfan症候群の60~70%に僧帽弁逸脱症を合併するとの報告がある。Myxomatous degenerationによる弁尖の変性、腱索の断裂によるものが主因と考えられている。
僧帽弁逸脱症の診断には心エコー図法が必須であり、特徴的な所見としてMモード心エコー図での僧帽弁エコーが収縮中期に突然背方(左房側)に転じるmid-systolic bucklingや、収縮期全般にわたる僧帽弁エコーの背方運動(pansystolic bowing)がある。僧帽弁逸脱症において僧帽弁逆流は必発で、逸脱部位によって僧帽弁逆流ジェットの方向が異なる特徴がある。前尖と後尖のmiddle scallopの逸脱では、逆流は左房後壁に向かって吹き、後尖のmedial scallopの逸脱では、僧帽弁開口部に沿ってそれぞれ反対の方向に吹く。また、僧帽弁を近距離から観察できるため、経食道エコー図法が逸脱弁の正確な同定に有用である。