近年、循環器疾患発症や予後に関して、遺伝や生活習慣の要因に加えて社会的要因が影響していることが知られるようになった。これを健康の社会的決定要因(social determinant of health;SDOH)と呼ぶ。社会的な階層と健康状態の関係性については古くから議論されており、以前は貧困問題が重要な課題とされてきたが、現在は貧困層に属さない職域階層でも、職業的地位が死亡率に影響を与えると考えられている。
世界保健機関(WHO)はSDOHを「人々が生まれ、成長し、生活し、働き、年齢を重ねる環境で健康上の結果に影響を与える医学的でない要因」と定義している。WHOでは、このような定義以外に、10のトピック(「社会格差」「ストレス」「幼少期」「社会的排除」「労働」「失業」「ソーシャルサポート」「薬物依存」「食品」「交通」)に分け、1つ1つの課題を議論している。ただし、これらの分類はお互いが相互に関連していることを認識しなければならない。
また、SDOHを解釈する際、SDOHは確率的な要因であって、因果関係を保証しないことも認識しなければならない。つまり、「教育レベルが低い人は健康状態が悪い」のではなく、「教育レベルが低い人は健康状態が悪くなりやすい」にとどまるのであり、医療者は循環器疾患が患者の自己責任であると決定づけず、患者の社会的背景を考慮した適切な支援や介入を行うべきである。