マルチオミクス

マルチオミクス解析とはマルチ(多数の)+オミクス解析〔生体内における、ゲノム配列(ゲノミクス)、転写物(トランスクリプトミクス)、蛋白質(プロテオミクス)、代謝物(メタボロミクス)情報などの解析〕を合わせた造語である。

上記に示すような生体内の機能を担う各階層において、今まではそれぞれ独立して解析が行われてきたが、マルチオミクス解析では階層間の関連に着目して解析する。

たとえば、遺伝子の配列情報(ゲノミクス)が遺伝子の発現量(トランスクリプトミクス)に与える影響を評価する、また生体内で合成される蛋白質(プロテオミクス)と代謝物(メタボロミクス)の関連から疾患の病態を評価する、といった解析がマルチオミクス解析の一例である。

マルチオミクス解析は創薬分野、難病や癌領域の病態解明に非常に有用であることが以前から指摘されていたものの、解析にかかる膨大なデータ量のコントロールおよび解析コストの観点からその実施は限定的であった。しかし、たとえばゲノミクスにおける解析コストの低下(2023年1月現在、全ゲノム解析において1検体あたり約10万円程度)、解析環境の充実に伴い、マルチオミクス解析実施のハードルは年々低下してきている。

循環器領域においては心筋症を中心とした難治性心血管疾患を対象に、全ゲノム解析から検出される複数のバリアントが疾患発症に与える影響・寄与度を評価するポリジェニックリスクスコア(PRS)解析研究、心筋組織を用いたマルチオミクス解析による疾患発症カスケードの解明研究などが実際に進行している。

さらに各症例のゲノミクス解析結果についてキュレーション(得られたバリアント情報について、病原性が高いものかどうかを各種公開データベース情報や過去の文献情報などから評価・検討すること)を行い、診断委員会の判断を経て、主治医・患者本人へ結果返却を行う臨床遺伝子診断も実際に開始されている。